【新聞掲載】もっと早く補聴器を使っていたら社会生活がより快適だった

2022.11.08

【第61回 2022年(令和4年)11月8日(7日発行)】

 認知症の危険因子として、難聴が指摘されています。しかし認知症やうつの危険性だけでなく、聞こえづらさを放置することで、大切な時間や楽しみを得る機会を逃しているかもしれません。

 というのは、補聴器の使用者への調査で、「補聴器をもっと早く使用すべきだった」という問いに過半数の54%の人がYESと答えたからです。そしてYESと答えた方への質問で補聴器をもっと早く使用していたら得られたと思うこととして、70%超の人が「より快適な社会生活」、50%近くの人が「より安定した精神状態」と答えました。(一般社団法人日本補聴器工業会「JapanTrak2018」から)。

 以前、私たちの店に来られたお客さまでこんな方がいらっしゃいました。その方は50代の男性で、子供の頃から聞こえづらさはあったものの、最近になってさらに難聴が顕著になり、自分の考えとしてはまだ自分は若いけれども補聴器をつけてみようと一念発起してご来店いただきました。

 警備の仕事をされており、建物の中なら比較的声を聞き取りやすいが、声の音程や話し方によっては、聞き取りにくい人もいる。また、後ろから話しかけられると聞き取れず、雑踏の中では対面の会話も分かりにくい。いろいろなシーンで聞きづらい中、夜勤もあり、日々仕事をしたり同僚と話したりするときに前向きな気持ちが持ちづらい、ということでした。

 補聴器をお試ししてもらい、購入後も2カ月程度調整に通っていただきました。すると、今まで聞き取りにくかった同僚の話が分かるようになり、以前は想定してない固有名詞が出てくると聞き取れなかったのに、今は聞き取れるようになったと言います。何より、仕事の指示が聞き取れないかもしれないとビクビクしなくなり、同僚と何げない話に加わることに抵抗感がなくなった、ということでした。

 聞こえというのは、人間関係や社会生活と密接に関わっています。補聴器は聞こえを改善する機器ですが、聞こえを改善することで、人ともっと話したいと思えたり、仕事に前向きになれたり、趣味を楽しめたりする原動力になると私は考えます。

https://hc.nikkan-gendai.com/articles/278323