この記事では、「骨伝導の仕組み」「骨伝導補聴器」を解説します。
【この記事の監修者】
田中智子(認定補聴器技能者・うぐいす補聴器 代表取締役)
補聴器を「日常生活をポジティブに自分らしく過ごせるようになるためのツール」と捉え、補聴器専門店「うぐいす補聴器」を開業。以前は有名補聴器メーカーのマーケティング部に所属し、全国5000店舗へ補聴器販売の指導を実施した経歴を持つ。高齢者難聴を得意とし、地域住民への啓蒙活動、高齢者への補聴器の装用トレーニングなども実施している。
目次
骨伝導補聴器とは
みなさんは「骨伝導補聴器」というものを聞いたことはありますか?
当店にも時々、この骨伝導補聴器に関してお問い合わせをいただきます。また、当店で定期的に開催している補聴器の勉強会でも、参加者から必ずといっていいほど骨伝導補聴器についての質問が挙がります。みなさんの骨伝導補聴器への関心の高さが伺えますね。
骨伝導とは?音が耳に伝わる仕組み
そもそも、「骨伝導」とはなんでしょうか?骨伝導という言葉自体に馴染みがない人もいるかもしれませんね。実は、私たちが聞いている音には「気導音」と「骨導音」の2種類があるのです。
上記画像のとおり、気導音は耳の穴に入った音が耳の奥を通って脳に伝わり、音として認識されるものです。一方で骨導音は、頭蓋骨の振動が脳に伝わることで音として認識されるもののこと。
耳をふさいでいても、自分の発する声は聞こえますよね?
あれは、声を発したときの声帯の振動が頭蓋骨に伝わって、骨導音として脳が認識している証拠なのです。
骨伝導とは、頭蓋骨の振動が脳に伝わることで音として認識される音の伝わり方のことです。
骨伝導イヤホンと骨伝導補聴器の違い
「骨伝導」と聞くと、「骨伝導イヤホン」を思い浮かべる方もいらっしゃるかも知れません。骨伝導イヤホンは最近のトレンドでもありますよね。通常のイヤホンと違って、頭蓋骨を振動させ骨導音として脳に音を送るため、イヤホンなのに耳をふさがないのが特徴です。つまり、音楽を楽しみながら、なおかつ周辺の音も聞き漏らしません。これが家事やランニングの際にとっても便利だと、多くの人に支持されているのです。
しかし、骨伝導補聴器は骨伝導イヤホンとは全くの別物。
名称が似ていることから混同されがちですが、「補聴器」と「イヤホン」ですので、性能や用途がそもそも根本的に違います。
骨伝導イヤホンのように、誰でも便利に使える万能品!というわけではないので、ぜひ注意していただきたいところです。
骨伝導補聴器に適した難聴の種類とは?
では、骨伝導補聴器はどういった人に適しているのでしょうか。
骨伝導補聴器とは?
骨伝導補聴器とは、前述した「骨伝導」の仕組みを利用した補聴器のことで、耳をふさがずに装着できるのが特徴です。
外耳や中耳を通さずとも、直接内耳に音を伝えることができるため、外耳や中耳に起因する難聴をお持ちの方には、骨伝導補聴器が有効な場合も多いです。
骨伝導補聴器が有効なのは、多くは伝音性難聴の方のみなんです。
難聴にも種類がある?骨伝導補聴器が有効な難聴の種類は
骨伝導補聴器が有効なのは「外耳や中耳に起因する難聴」だとお伝えしました。外耳や内耳になんらかの問題が発生して起こる難聴のことを「伝音難聴」と言います。実は、難聴はそのほかにもいくつかの種類があり、問題が起こっているのが耳の中のどの部分かによって分類されるのです。
外耳や中耳といった、比較的手前(耳たぶから鼓膜まで)の部分に問題が生じている状態を伝音難聴といいますが、それよりも奥にある内耳(蝸牛という器官)や聴神経・脳に問題が生じている状態は、感音難聴といいます。
そして伝音難聴・感音難聴のどちらをも併発した状態を混合性難聴と言います。
前述したように、骨伝導補聴器は外耳・中耳を通さずに直接内耳に音を届けるものですから、外耳・中耳に問題が起きている伝音難聴の人にとってはもってこいのものだと言えます。
しかし、内耳や聴神経・脳に問題が生じている場合には、直接内耳に音を届けても、その部分自体に異常があるため音は届きません。
加齢性の難聴は、骨伝導補聴器では改善できないことが多いです。
骨伝導補聴器の音や聞こえはどう?聞こえにくさはどこまで改善する?
骨伝導補聴器は、一般的な補聴器よりも親しみやすさが感じられるかもしれません。
しかし、聞き取る音の音質は、一般的な補聴器に比べると大きく劣ると言われているのも現実。
ご自身の難聴の状態や、それぞれの補聴器の使い心地をしっかりと見極めて選択していただきたいです。
骨伝導補聴器のメリット
骨伝導補聴器のメリットといえば、やはり1番は「耳をふさがないこと」ではないでしょうか。
イヤホンや補聴器などを「耳の中に入れっぱなしにしているとかゆくなる」といった人にもおすすめだといえます。
メガネ型やカチューシャ型など、一見補聴器だとはわからないようなファッショナブルな製品が多いことも魅力のひとつです。
骨伝導補聴器のデメリット
デメリットとしては、骨伝導補聴器特有の締め付け感があること。
きつく当てないときちんと音が伝わりません。これをラクにしようと締め付けをゆるめに調整してしまうと、今度は逆に音を補聴器に集めるための振動板がずれやすくなってしまい、結果的に音がちゃんと聞こえないなどの問題が生じてしまいます。
振動板は少しの衝撃でもずれやすく、これをストレスに感じてしまう人も居ます。
高齢者の難聴(加齢性難聴・老人性難聴)にはおすすめ?
加齢性難聴には骨伝導補聴器はおすすめしません。
加齢による難聴は多くの場合、感音難聴か混合性難聴の場合がほとんど。
つまり、「年齢を重ねて聞こえにくくなってきた・・」と感じている方には骨伝導補聴器は適さないのです。加齢による難聴にはやはり、骨伝導補聴器ではなく一般的な補聴器をおすすめします。
一般的な補聴器であれば、適切に調整を行うことで聞こえを大きく改善させられる場合もあるんですよ。
加齢性の難聴は、骨伝導補聴器はおすすめできません。
でも、一般的な補聴器であれば、今より聞こえを改善することは可能です。一度試してみませんか。
骨伝導の仕組みと骨伝導補聴器が合う人、合わない人を解説しました。うぐいす補聴器では、世界5大メーカーの最新器種をお客様の生活環境に合わせて調整するので、使用者に最適なオーダーメイド補聴器をご提供します。お気軽にご相談ください。
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