【第64回 2022年(令和4年)11月29日(28日発行)】
おかげさまでこの連載も60回を超えました。最近ではネットニュースにも転載され、読者からのコメントもよくいただけるようになり感謝しています。
そんな中、「気持ちが若い人ほど補聴器使用が早いと思います。心まで年老いてしまうと、周りの人のせいにして、補聴器使用に踏み切れません」といった内容のコメントを見つけました。
実際に来店されるお客さまも、気持ちが前向きな方は補聴器を自分でつけたり外したりする装用練習に積極的です。具体的な質問もいろいろしてくれます。
先日、98歳の1人暮らしの女性のお客さまがいらっしゃいました。同じマンションの違う階には息子さんご夫婦が住んでおり、最初はその息子さんから相談を受け、ご自宅の訪問となりました。まず聴力測定を行うと障害者手帳の申請が可能とみられ、さっそく耳鼻咽喉科での受診をお勧めし、障害者手帳を取得。補聴器の支給申請も実施しました。
申請してから支給決定までの間に補聴器の装用に慣れてもらうため週に1度訪問し、補聴器の調整と装用練習もしていただきました。
とてもお元気な方で歩行器を使いご自身で外出されるのですが、ただ手先が少し不自由なため補聴器を耳につける動作がままなりません。
そこで印象的だったのが、息子さんがまるでコーチのように「はいじゃあ5回やってみよう」と根気よく優しく声をかけ、2人で楽しく練習をされている様子でした。今ではすっかり慣れ、当初は自分では難しかった電池交換までされています。
最初に購入した補聴器は、福祉で支給を受けられる片耳だけでしたが、その後に両耳でつけた方が聞こえが良いと、お孫さんからもう片方もプレゼントされ今では問題なく使いこなされています。補聴器をつけるのがかっこ悪い時代は終わりました。補聴器をつけることは前向きに人生を楽しむことなのですから。