【新聞掲載】気が付いたら音楽がない生活…それがあるときを境に一変した

2021.12.07

【第20回 2021年(令和3年)12月7日(6日発行)】

「ミュージックモードにすると高音が割れることなくきれいに聴こえ、臨場感が増しました」

 これは、当社のスタッフがクラシックコンサートに行き、新発表された補聴器のプログラムで音楽を聴いたときの感想です。

 補聴器は「言葉」を聞くためのものです。小さい音は大きく聞き取りやすくし、騒音などの大きい音はデジタル処理で抑制して言葉を聞き取りやすくします。

 一方、音楽はさまざまに重なり合う音の抑揚を楽しむもの。言葉の聞き取りとは真逆の処理を求められます。近年、補聴器メーカーは音楽を楽しむための機械の開発に力を入れています。しかも後からその機能を追加してアップデートでき、補聴器自体をバージョンアップさせられるのですから驚きです。

 当社のお客さんで、この補聴器を購入された方がいました。その方は元レコード会社に勤務されていた73歳の男性で、若い頃はたくさんの音楽を聴いていたのですが、いつしか難聴になり、知らず知らずのうちに音楽から遠ざかっていたといいます。

「家には何百枚もレコードがあって、大音量にすれば聴こえるけれど、そうすると奥さんにはうるさくて、迷惑をかける。気が付いたら音楽がない生活になってしまった。若い頃はあんなに好きだったのに……」

 そう寂しそうにおっしゃっていたのですが、この補聴器に音楽モードを入れて、自宅でクラシック、ジャズ、歌謡曲とジャンル別に聴き比べを試してもらったところ、音楽を楽しんでいた頃を思い出し、心が若返ったようだと喜んでいらっしゃいました。

 日本補聴器工業会という業界団体の市場調査によれば、これまで補聴器をつけた上での音楽鑑賞の満足度は34%と低く、7割近くの人が満足できていないといいます。

 今後は補聴器が生活の潤いをもたらすカルチャーマシンとしての役割も担うことになるのかもしれません。

https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277013