【第50回 2022年(令和4年)8月9日(8日発行)】
最近、AIと呼ばれる人工知能が搭載された補聴器が各メーカーから発売されています。
アメリカのメーカー「スターキー社」のAI搭載機種は、1時間に5500万回、1日換算すると10億回もの自動調整に加えて、「もっと聞きたい」ことを簡単な操作で伝えることで、AIをコントロールすることもできます。
操作は耳につけた補聴器を軽くトントンと叩くだけ。
センサーとAIが動きだし、10~15秒前の音の環境を分析して適切な音にしてくれます。どんなシーンにあっても、クリアでバランスの取れた音声を正確に耳に届けてくれるのです。
私がこのメーカーを興味深く思うのは、補聴器を単なる補聴器と捉えず、スマホやパソコン機器と同じ、情報を介助する機器「パーソナルアシスタント」と捉えている点。その立場での製品開発は、補聴器の未来に大きな影響を与えると考えています。
このパーソナルアシスタント補聴器は、携帯のGPS機能と連動して位置情報を分析するジオタグ機能を追加すると、訪れる場所に合わせてモードを切り替えてくれます。
ボディスコアモードといって、毎日の歩数と運動量をモニターし記録するのはもちろん、たとえば「座り過ぎですよ」とか「運動を何分しましたよ」というパーソナルコーチの役目もしたり、さらに補聴器の使用時間や会話した時間を点数化したりすることもできます。
その他の機能としては、センサーが転倒を検知し、登録した連絡先に通知を自動送信したり、音で薬を飲む時間を教えてくれたりします。また聞こえた言語と、自分がしゃべる言語をリアルタイムで、27言語に対応して音声翻訳したり、さらには会話を文字起こしして、スマートフォン画面に表示し保存やメールで送れたりとさまざまです。
補聴器が補聴器の概念を超え、音を聞くだけでなく秘書や介助者のような役割を担うデバイスとして活躍してくれる。そんな時代がもうすでに訪れているのです。