【新聞掲載】障害は社会の問題 手話が一般化すれば難聴はハンディにならない

2022.07.12

【第47回 2022年(令和4年)7月12日(11日発行)】

 聞こえづらさに悩む人が、補聴器をつけることで難聴という障害を克服し、社会活動を行ってきた例をこれまでいくつもお伝えしてきました。

 実はこの障害には、「医学モデル」と「社会モデル」の2つの考え方があります。

「医学モデル」とは、障害は個人の心身機能が原因であるとする考え方。一方「社会モデル」は、障害は社会における物理的、制度的、文化・情報、生理的意識上などの各種のバリアーによって引き起こされているという考え方です。

 たとえば、車椅子の方がレストランに入れない。でも入り口が広かったり、エレベーターがあれば、不自由なく入店できるでしょう。その場合は車椅子の方も健常者の方もお店に入る障害はありません。

 このように障害は、環境やモノなど社会の側にあるという「社会モデル」の考え方が広がってきました。

 聴覚でも、仮に社会の全員が手話をできれば、耳の聞こえにくさを難聴者はハンディに思うことなく、全員が同じようにコミュニケーションが取れます。

 難聴では、補聴器で聴覚を補うことはもちろん大切であり、有効な手段のひとつですが、同時に、周囲の環境やその周りにいる人も難聴に対する正しい知識を身につけ、難聴者が活動しやすい環境を整えることも求められるのではないでしょうか。

 ほんの小さなことや少しの配慮から始めていけば大丈夫。難聴で言えば、ゆっくり正面から話しかける。話しかける前に合図をして、注意喚起してから話しかけるなど、ちょっとした工夫が環境を整えることになると思います。

 まさに心のバリアフリーの実践です。

 そのためにも差別を行わず、多様な人々とのコミュニケーションを行う力を磨き、障害を取り除く。

 また、取り除くための手助けをする。これらが豊かな共生社会実現に向けて、今後ますます求められるのではないでしょうか。

https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277842