【第9回 2021年(令和3年)9月7日(6日発行)】
健康診断で所見ありと診断され補聴器の相談に来られる方がよくいます。
通常、健康診断で測る音域(音の高さ)は、時報の音程度の1000ヘルツから、鳥の鳴き声程度の高音域である4000ヘルツ。音量(音の大きさ)は、30デシベルとちょうど鉛筆の筆記音に相当する音と、ささやき声程度の40デシベル。この音の高さと大きさの組み合わせで左右各耳で聞こえているかをチェックします。
ちなみに会話の中心となる音の範囲は、250から4000ヘルツ。数字が小さくなるほど低音になるので、検査でチェックする音は会話の音域において比較的高い音になります。
なぜ高い音を重点的に調べるのか、不思議に思う方もいるかもしれません。加齢性難聴では、多くの方が高い音の音域で、かつ30デシベルと40デシベルという小さな音から聞こえづらさを自覚し始めるからです。
それは耳の構造に要因があります。
耳の穴から入ってきた音は鼓膜に届き、中耳を通して音を増幅しさらに奥の内耳に届きます。内耳の中の蝸牛(かぎゅう)というカタツムリ状の管の中で音を電気信号に変え、音の高低や大きさを分析し、脳に伝わります。
蝸牛の中は高い音のセンサーが手前に、低い音のセンサーが奥にあります。低い音も手前にある高音センサーを通過して奥へと届けられるため、高音センサーが酷使され、加齢と共に摩耗すると、高い音が聞こえづらくなっていくのです。
いずれにしても難聴は脳に音の情報が届かない状態です。脳に情報が入らない期間が長ければ長いほど、補聴器で音を入れた時にその音の大きさにびっくりしてしまいます。ですが早めに対処すれば慣れるのも早くなります。その場合、年齢は関係ありません。
健康診断で難聴を指摘されても、老いを指摘されたように感じ、なかなか補聴器を作らない人もいます。しかし難聴と言われたら、専門医や補聴器の専門店に相談し、早めに補聴器を装着することをお勧めします。