【新聞掲載】難聴は認知症の最大の危険因子…軽度でも発症率が2倍高い

2021.07.06

【日刊ゲンダイ掲載記事第1回 2021年7月6日掲載】

認知症の危険因子として近年、注目を集めているのが難聴です。

2020年、世界5大医学雑誌の一つである「ランセット」にこんな論文が掲載されました。それは、認知症の40%は予防可能な要因であるというもの。 

予防可能な要因としては難聴、喫煙、うつ、社会的孤立、高血圧、運動不足、糖尿病、過剰アルコール摂取、肥満などがあり、この中で難聴は8%を占め、最大の危険因子だと指摘されました。高血圧は2%、糖尿病は1%ですから、いかに難聴の影響が大きいかが分かるかと思います。 

厚労省は、認知症対策として15年に「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」を策定し、難聴を加齢、高血圧、糖尿病とならぶ認知症の危険因子として挙げていますが、一般の人への認知度はまだまだのように感じます。難聴を自覚して補聴器を持っている人は14・4%。逆に言うと、聞こえづらさを自覚しながら、85・6%の人は難聴を放置しているのです。 

なぜ、難聴は認知症リスクを上げるのか? それは、聞き取れない会話を交わすうち、相手から誤解されたり疎外され、次第に社会的に孤立し、知らぬうちに認知機能が低下してしまうからです。 

私たちは言葉を聞いて、頭の中で理解します。この頭の中で聞いた言葉を理解する時に必ず、その言葉と共に伝わる感情も受け止めています。そして、それに伴い、複雑な高次の脳機能の働きを行うのです。 

難聴と認知症についての10年間の追跡調査によると、高度難聴の人は難聴がない人に比べて認知症の発症率が5倍高く、軽度難聴であっても2倍高いとの結果でした。 

難聴は別名「ほほ笑みの障害」と呼ばれています。聴覚は私たちの情操に影響を与えるとても重要な感覚器官なのです。聞こえが悪いと感じる、または周囲から指摘されるようなら、早い対策が必要なのです。