「AI補聴器」って結局何が変わったの?——プログラム数競争から“頭の良さ”の時代へ

2026.09.04

フォナック・シグニア・オーティコン・スターキー・リサウンドのAI補聴器を比較

「最近の補聴器はAI搭載らしいけど、今までの補聴器と何が違うの?」

補聴器を調べていると、「AI」「ディープニューラルネットワーク」「専用AIチップ」といった言葉を目にすることが増えてきました。

でも、初めて補聴器を選ぶ方にとって大切なのは、難しい技術名ではありません。

「AIが入ったことで、実際の生活で何が変わるの?」

ということではないでしょうか。

簡単にいうと、補聴器は「音を大きくする」だけではなく、周囲の音を分析しながら、会話と雑音などをより細かく見分けて処理する方向へ進化しています。

たとえば、

「静かな部屋なら聞こえるのに、レストランでは会話が分からない」

「家族が何人か集まると、誰が何を話しているのか分からなくなる」

「聞こえるように音量を上げると、食器やエアコンの音までうるさくなる」

といった悩みです。

こうした「ただ音を大きくするだけでは解決しにくい聞こえ」に、各補聴器メーカーがAIを使って取り組んでいます。

今回は、フォナック・シグニア・オーティコン・スターキー・リサウンドの5メーカーを例に、AI補聴器で何が変わってきたのかを分かりやすく比較します。

昔の補聴器は「用意されたパターンから選ぶ」のが得意だった

昔の補聴器とAI補聴器の違い

以前から補聴器には、周囲の音環境を判断して、自動的に聞こえ方を調整する機能がありました。

たとえば、

  • 静かな場所
  • 会話している場所
  • 騒がしい場所
  • 音楽を聴いている場所

などです。

補聴器が周囲の音を分析し、

「今はこの環境だろう」

と判断して、それに適した処理へ切り替えたり、複数の設定を組み合わせたりしていました。

技術が進歩するにつれて、補聴器が認識・処理できる音環境はどんどん細かくなっていきました。

ただ、現実の生活はそれほど単純ではありません。

同じ「レストラン」でも、

目の前の人と2人で話している場合もあれば、6人で話している場合もあります。

隣のテーブルが静かなこともあれば、宴会をしていることもあります。

話している相手が正面にいるとも限りません。

そこで近年、AIやディープニューラルネットワークなどを利用して、複雑な音環境をより細かく分析・処理する技術が各メーカーから登場しています。

AI補聴器で変わったのは「音を大きくする、だけではない」こと=その場の環境を補聴器自体が考えてくれる

AI補聴器を理解するときに重要なのが、

「聞こえにくい=音が小さい」だけではない

ということです。

たとえばレストランで、

「相手の声が聞こえないから、もっと大きくしてください」

と補聴器全体の音を大きくしたとします。

すると、相手の声だけでなく、

「ガチャガチャ」という食器の音。

エアコンの音。

隣のテーブルの話し声。

店内のBGM。

こうした音まで大きく感じてしまうことがあります。

そこで重要になるのが、

「何を聞き取りやすくして、何を抑えるのか」

という処理です。

具体的な例:「道路の騒音」と「話しかけてくる人」が同時にいたら?

例として、交通量の多い幹線道路のそばで歩きながら会話する場面を考えてみましょう。

今までの補聴器とAI補聴器の処理の違い

左側では車がひっきりなしに走っていて、「ゴーッ」という大きな走行音が聞こえています。一方、右側からは知人があなたに話しかけています。

ここで聞きたいのは、もちろん車の音ではなく、右側にいる人の声です。

<従来の補聴器の場合>

従来の補聴器では、周囲の音を分析して、

「ここは騒がしい環境だ」

と判断すると、騒音下に適したプログラムや処理へ切り替えていました。

しかし、実際の環境には「聞きたくない車の音」と「聞きたい人の声」が同時に存在しています。

そのため、騒音を抑えようとすると会話まで小さく感じたり、反対に会話を聞こうと音量を上げると車の音まで大きく感じたりすることがありました。

「音は聞こえている。でも、肝心の言葉が分からない」

ということが起こりやすかったのです。

<AI補聴器の場合>

AIを活用した最新の補聴器では、単純に、

「騒がしい場所だから音を下げよう」

と判断するだけではありません。

周囲にある音をより細かく分析し、左側から聞こえる車の走行音などの雑音を抑えながら、右側から話しかけている人の声を聞き取りやすくするような処理が可能になってきています。

つまり重要なのは、「騒がしいか、静かか」だけではなく、

「その騒がしい環境の中で、どの音が会話で、どの音が雑音なのか」

まで細かく判断して処理する方向へ進化していることです。

この違いこそが、AI補聴器の進化を理解するうえで大切なポイントです。

「全部の音を大きくする」のではなく、「聞きたい音を聞きやすくする」。

補聴器は、そんな時代へと変わってきています。

近年のAI補聴器では、各メーカーがそれぞれ異なる方法で、この問題に取り組んでいます。

フォナック|AIで雑音と会話を分けて聞き取りやすくする

フォナックがAI技術で力を入れているのが、騒がしい環境での会話の聞き取りです。

「DEEPSONIC」と呼ばれる専用チップとディープニューラルネットワークを活用し、雑音と会話をリアルタイムで処理して、騒音下でも言葉を聞き取りやすくすることを目指しています。

さらに「オートセンス OS」によって周囲の音環境を分析し、状況に合わせた処理を自動的に行います。

つまりフォナックのAIを分かりやすく表現すると、

「騒がしいところでも、会話をできるだけ浮かび上がらせる」

という方向性です。

レストランや人が集まる場所など、雑音の中で会話する機会が多い人は、実際に試してみたいアプローチのひとつでしょう。

シグニア|複数人の会話でも「今話している人」を追いかける

シグニアの「IX」シリーズで特徴的なのが、会話への「ロックオン」という考え方です。

複数人で会話していると、

正面の人が話したあと、右側の人が話す。

今度は左側の人が話す。

また正面の人が話す。

というように、聞きたい声の場所が次々に変わります。

シグニアでは、こうした動きのある会話を分析し、話している人の声を捉えて聞き取りやすくすることを目指しています。

従来のように単純に「音を拾う範囲を広げる」だけでは、会話と一緒に周囲の雑音まで入りやすくなります。

そこで、話している人そのものを捉えるという方向へ進化させているのが特徴です。

シグニアの公式情報では、1秒間に1,000回音を分析するなど、非常に細かな処理を行っていることも紹介されています。

特に、

「1対1なら聞こえるけれど、家族や友人が何人か集まると分からなくなる」

という人にとって、試してみる価値のある技術でしょう。

オーティコン|音だけでなく「あなたが何を聞こうとしているか」を考える

オーティコンは、少し違った方向からAIを活用しています。

特徴的なのが、

「人間は耳だけで聞いているのではなく、脳で音を理解している」

という考え方です。

「オーティコン インテント」では、周囲の音だけでなく、頭や身体の動きなども利用しながら、装用者がどのような聞こえを必要としているのかを判断してサポートする考え方を採用しています。

たとえば同じ騒がしい場所でも、

誰かと積極的に会話しているときと、

一人で周囲の音を聞いているときでは、

必要な聞こえ方は違います。

単純に、

「この場所は騒がしいから、この設定」

と決めるだけではなく、

「この人は今、何を聞こうとしているのか」

まで考慮しようとしているのが、オーティコンの特徴です。

スターキー|AIにできるだけ「おまかせ」して環境に合わせる

スターキーも、AIを使って周囲の音環境を分析し、状況に合わせて音を調整する技術を進化させています。

静かな部屋から外へ出る。

外から騒がしい店へ入る。

風の強い場所を歩く。

このように生活の中では、音環境が次々と変化します。

そのたびに自分で補聴器を操作するのは大変です。

スターキーは、人間の聴覚を参考にした音声処理技術やAIを活用し、環境に応じた調整をできるだけ補聴器側に任せる方向性を打ち出しています。

補聴器の細かな設定を自分で頻繁に操作するより、

「できるだけ補聴器に任せて使いたい」

という方にとって、注目したい考え方です。

リサウンド|AIで「聞きたい音を選ぶ力」をサポート

リサウンドは、「インテリジェンス・オーグメンテッド(IA)」という考え方を打ち出しています。

人間にはもともと、たくさんの音の中から、

「この人の話を聞こう」

と必要な音へ注意を向ける働きがあります。

リサウンドは、AIがすべてを決めてしまうというよりも、人が本来持っている「聞きたい音を選ぶ力」をAIでサポートするという考え方を重視しています。

「リサウンド・ビビア」では、多くの会話データを学習したDNN(ディープニューラルネットワーク)を利用して、騒がしい環境での会話を聞き取りやすくすることを目指しています。

AIによる処理能力だけでなく、小型化などとの両立を進めている点も特徴です。

5メーカーのAI補聴器の比較一覧表

同じ「AI補聴器」という言葉を使っていても、メーカーによって考え方は異なります。

各メーカーのAI補聴器の考え方の一覧

ただし、この表だけを見て、

「自分にはこのメーカーが一番」

と決めてしまうのはおすすめしません。

同じ難聴の程度でも、聞こえ方や言葉の聞き取り能力、生活環境は人によって違うからです。

実際にAI補聴器へ替えたら、生活が変わったという声も

最新のAI補聴器に変えると、空気清浄機の音が下がり、会話がよりハッキリ聞こえるようになったという女性

AI補聴器の違いは、カタログの数字よりも、日常生活の中で実感できることがあります。

あるお客様は、今まで使用していた補聴器について、

「会話が聞きにくいので音を大きくしてもらうと、空気清浄機の音まで大きくなってしまう」

ことに困っていました。

空気清浄機の音がつらいので設定を下げてもらう。

すると今度は、会話まで聞き取りにくくなる。

そのため、最終的には空気清浄機を使うこと自体をあきらめていたそうです。

ところが新しいAI補聴器を試したところ、雑音が以前ほど気にならず、会話も聞き取りやすくなったとのこと。

そして、

「これなら空気清浄機を使える」

と、以前あきらめていた使い方ができるようになりました。

補聴器の進化というと、

「AIチップ搭載」
「○○回処理」
「○○万件のデータで学習」

といった数字に目が行きがちです。

しかし、本当に重要なのはそこではありません。

「補聴器が変わったことで、今まであきらめていたことができるようになったか」

です。

これこそ、AI補聴器を比較するときに見てほしいポイントです。

「AI搭載=自分に一番よく聞こえる」とは限らない

ここはとても大切です。

最新のAIを搭載した高性能な補聴器だからといって、すべての人に同じような効果が出るとは限りません。

聞こえ方は、

  • 聴力
  • 言葉を聞き分ける力
  • 耳の状態
  • 補聴器の形状
  • フィッティング
  • 普段過ごしている環境

などによって変わります。

そして何より、

あなたがどんな場面で困っているのか

によって、必要な機能が変わります。

レストランで友人と話したい人。

家族5人で食卓を囲んだときに聞き取りたい人。

テレビを楽しみたい人。

仕事の会議で使いたい人。

趣味の集まりで使いたい人。

それぞれ「良い補聴器」の条件は違います。

だからAI補聴器は、スペック表だけで比較するのではなく、自分が困っている生活場面を想定して試聴することが大切です。

AIの性能だけでなく、バッテリーも確認しよう

AI補聴器では高度な音声処理が行われますが、実際の使用時間は製品や使用状況によって異なります。

さらに、

  • Bluetoothで電話をよくする
  • 音楽をストリーミングする
  • テレビの音を補聴器へ直接飛ばす

といった使い方をすると、バッテリー消費が変わります。

そのため「最大○時間」という数字だけを見るのではなく、

「私の使い方だったら、朝から夜まで持つかな?」

と販売店で確認したり、実際に貸し出してもらって日常生活で試してみることをおすすめします。

最後に大切なのは「AIの性能」より、あなたの生活に合わせられるか

5メーカーのAI技術を比較すると、

「どのメーカーが一番賢いの?」

と考えたくなるかもしれません。

でも、補聴器選びで本当に大切なのは、AI技術の名前やスペックだけではありません。

あなたが実際に困っている場面で、聞きやすくなるかどうかです。

だからこそ、販売店を選ぶときも、

「最新のAI補聴器ですよ」

と商品を勧めるだけではなく、

「普段、どこで一番困っていますか?」
「何人くらいで話すことが多いですか?」
「仕事でも使いますか?」
「電話はよくしますか?」
「テレビはどのくらい見ますか?」

と、あなたの生活まで聞いてくれるお店を選ぶことをおすすめします。

そして実際に使って、

「レストランではまだ聞きにくい」

「家族との会話はすごく楽になった」

「食器の音が少し気になる」

といった感想を伝えながら、調整を重ねていくことも重要です。

AIがどれだけ賢くても、最後にその性能を「あなたの聞こえ」に合わせることが必要です。

補聴器は、カタログの数字だけで決めるものではありません。

気になるメーカーやAI補聴器があれば、まずは実際に試聴して、自分の生活の中でどんな違いがあるのかを確かめてみてください。

まとめ|AI補聴器は「音を大きくする」から「音を賢く処理する」時代へ

AI技術の進歩によって、補聴器は単純に音を大きくするだけではなく、周囲の音環境をより細かく分析し、会話と雑音などを処理する方向へ進化しています。

フォナックは、雑音の中での会話。

シグニアは、複数人での会話。

オーティコンは、装用者が何を聞こうとしているか。

スターキーは、環境に合わせた自動調整。

リサウンドは、人が聞きたい音を選ぶ働きのサポート。

同じ「AI補聴器」でも、各メーカーが目指している方向には違いがあります。

だから、

「AI搭載だから選ぶ」のではなく、「このAIが、自分の困っている場面で役立つか」で選ぶ。

これが、これからの補聴器選びで大切な考え方です。

そして、その違いはカタログを眺めているだけでは分かりません。

実際に聞いて、生活の中で試して、必要に応じて調整する。

そこまで含めて、自分に合った補聴器を探してみることをおすすめします。

補聴器は「選んだ後」の暮らしへのなじませ方が大切です

「どの補聴器を選ぶか」より大事なのは、「本人が本当に暮らしの中でその補聴器を使えるか」です。
補聴器をご自身の生活にスムーズに馴染ませ、毎日しっかり活用していただくための具体的な工夫をご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
暮らしの中で補聴器をしっかり使えるようにするための工夫はこちら

補聴器のお試しなら「うぐいす補聴器」へ

東京・池袋の補聴器専門店「うぐいす補聴器」は、在籍するスタッフ全員が資格を有する”聞こえのプロ”。当店では、複数メーカーの補聴器を常時取り揃えており、それぞれ比較しながら試聴することも可能です。聞こえのことや補聴器に関するお悩みは、ぜひお気軽に当店へお問い合わせください。

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