【第57回 2022年(令和4年)10月4日(3日発行)】
聞こえの悪い人が補聴器を使うことで、今まで聞き取れなかった言葉や音が聞こえるようになるのは確かですが、それでも必ずしも完全に聞こえるようになるわけではありません。
補聴器を購入する場合、必ず聴力測定を行います。販売店では大きく分けて2つの測定を行います。低音から高音までのそれぞれの音の領域で、どのくらいの音の大きさなら聞こえるかを調べる目的の「純音聴力測定」。そして言葉をどれだけ正しく聞き取れるかを調べる「語音明瞭度測定」です。
人は音を聞き、さまざまな音を識別し、言葉を理解し、考え、コミュニケーションを取っています。
ちなみに「きく」という5つある同音異義語はそんな聞こえることの大切さを考えさせてくれます。
それはまず、耳で音や声を感じ取る「聞く」と、耳を傾け注意して聞き取る「聴く」。そして次に相手に質問する「訊く」。さらにそれを受けて機能能力を発揮する「利く」。そして、結果その人の周辺や社会に良い影響が表れる「効く」と当てはめることができるのではないでしょうか。
補聴器は耳の聞こえが悪くなっている方にとって、この5つの「きく」をもう一度実現するために有効なマシンだといえます。
以前、夫と息子さん夫婦と4人暮らしをされている95歳の女性のお客さまがいらっしゃいました。
その方の場合、まず自宅のインターホンが聞こえづらく、テレビ番組も聞こえづらくて楽しめない。ご本人としては家族やデイサービス、病院での会話や交流をスムーズにしたいという強い思いをお持ちでした。
そして「聴力測定」と「語音明瞭度」を行い、幾多の調整を経て、ご自身も納得の調整で補聴器を装着されています。今ではデイサービスのバスの後ろの席でも、運転手さんの声が聞こえるほどになり、改めて人との関わりの大切さを再認識し、「きく」ことを楽しむ生活を取り戻されたといいます。