【第56回 2022年(令和4年)9月27日(26日発行)】
「補聴器をプレゼントしたい」というご家族からの問い合わせが、以前よりも多く寄せられるようになりました。難聴が認知症の危険因子だという認識が広まったためだと考えています。
実際に相談に来た方から、「何度も聞き返されるから、親が次第に最低限のことしか話さなくなり、このままではダメだと思った。以前のように会話をするために、親に補聴器をプレゼントしたい」という話をよく聞きます。
親御さんの難聴を心配する気持ちはよく分かるのですが、「単にプレゼント」ということはおすすめしません。それは、補聴器は必ず装着してからの調整が必要だからです。
以前あるご夫婦からこんな連絡をいただきました。現役でお花の先生をやっている90歳のお母さまに、補聴器をつけてもらいたいというもの。
早速ご自宅に訪問し、お母さまに話をうかがいました。すると、補聴器を以前購入したことがあり、しかし装着したときの痛さから断念。長らく補聴器をつけることに消極的だったのですが、今回はご家族のサポートもあり、補聴器を使ってみようかと思ったとのこと。懇意にしている耳鼻科で難聴の具合を調べ、2週間の補聴器レンタルを開始。耳型を取ってご自身の耳の形にぴったりフィットする耳穴型を選択され、最終的に購入となりました。
調整が落ち着き、1カ月後に点検のために訪問すると、当初は2時間も連続装用できなかったのに、今では毎日9時間も装着され、テレビの音のボリュームも自然と小さくなったといいます。息子さんからはお母さまの様子がLINEで当社に届けられるので、それを、次回の調整に生かすようにしています。
このようにご家族の協力があれば、調整もスムーズに行え、本人の補聴器をつけるモチベーションも維持しやすくなります。どうか補聴器をプレゼントする際は、家族のサポートという愛も一緒に添えていただければと思います。