【第22回 2021年(令和3年)12月21日(20日発行)】
耳鳴りは、実際の音が鳴っているわけじゃないのに脳が音を作り出す異常な音感覚であると前回お伝えしました。
現在、わが国におけるこの耳鳴りの有病率は、全人口の約15~20%であり、さらに65歳以上の高齢者では30%以上が耳鳴りで苦痛を感じているとされています。
しかし日本では1984年に「標準耳鳴検査法」が作成され、93年に改正されたものの、20年間も改正されていませんでした。一方欧米では研究が進んでおり、日本でも診療ガイドラインの作成が強く求められていました。そんな中、ようやく2014年に「耳鳴診療ガイドライン」の開発に関する研究が採択され、慶応大の小川郁教授を代表にして3年余りかけ、耳鳴診療ガイドラインが19年に完成しました。
それによると耳鳴りの治療法として、薬物療法・補聴器・音響療法・認知行動療法・手術があるとされていますが、中でも最近注目されているのが、補聴器を利用した音響療法なのです。 補聴器を用いた音響療法は、聞こえにくくなっている音を補聴器によって大きくし、脳に届く電気信号を増やします。それにより本来の聞こえている状態に近づけ、脳の興奮を抑えて耳鳴りを軽減するのです。
補聴器によって耳鳴りの症状を改善するという、これまででは考えられなかったこの治療方法は、補聴器の新たな可能性を広げるものです。
その他、病院では音を気にしないためのカウンセリングを重視しています。「今日の耳鳴りはどうかな」と確認してしまうと、余計にそれが気になってしまい耳鳴りが大きくなってしまいます。長い目で見て好きなことを楽しむ生活をしているうちに、知らず知らずのうちに耳鳴りが気にならなくなるかもしれません。
とはいえ、補聴器に抵抗感のある方もいるでしょう。でも耳に小さな機械を装着するだけで、聞き取りやすくなったり、耳鳴りが気にならなくなる生活を想像してください。その後の生活がより明るく変わるかもしれませんよ。