【第75回 2023年(令和5年)2月28日(27日発行)】
先日、60歳代前半の男性のお客さまにご来店いただきました。
この方は複数の会社で監査の仕事をされており、仕事の中で常に細かな数字を交えた打ち合わせや、会議をしたりすることが多いのですが、いつしか耳の聞こえが悪くなり、5年ほど前に量販店で補聴器を購入。
ですが、イマイチ聞こえの改善を実感することなく時が過ぎ、たまたま当店のチラシを見つけて、訪れたとのことでした。
男性にとって一番の驚きは、なんといっても、補聴器は買ってから調整するものだということだったようです。
それからは3カ月の間に週1のペースで通っていただき、「今週の会議ではこうだった」「こういう人の会話が聞きづらかった」「こんな場面でよく聞こえた」などの感想をいただきながら、少しずつ調整することとなりました。
やがて今までならまったくお手上げ状態だった複雑な会話も、100%ではないが、お持ちの補聴器でも聞き取れるように。
そして今年になり定期点検で来店した際には、マスク生活も長引きそうとのことで、新商品を試していただき、耳穴型に変更されました。
実は購入前に耳鼻科の先生から、今のこの聴力なら補聴器がなくても大きな声を出せば聞こえるから、無理に購入することはないと言われたそうです。
しかし、仕事を行う上や習い事で先生の声が聞こえなかったり、法事に行って久しぶりに会う親戚との会話もできないといったことが重なり、だんだん人と話すのがおっくうな気持ちになっている自分に気づき、聞こえることの重要性を痛切に感じていました。事情を話すと、耳鼻科の先生も有用性を認めてくれたとのこと。
人との会話は、周囲や相手の思いに歩調を合わせるという高度な脳のはたらきを必要とするため、認知症予防にも有効とされています。そんな耳の不自由な方にとって補聴器は、大切な人生の“歩調器”でもあるのです。