【第71回 2023年(令和5年)1月31日(30日発行)】
以前、この連載記事を読んでご来店いただいた70代の女性のお客さまがいました。この方は、これまで使われていたものと同じメーカーの、一番新しい機種を試されました。
すると「人の声や音が、今自分が持っている補聴器よりも、とても自然に聞こえる」と新しい補聴器の性能に驚かれたのです。
どのくらい小さな音まで聞こえるか、テストを実施したところ、すでにお持ちの補聴器では、聞こえる音の大きさは、つけていないときとそれほど変わらないことがわかりました。
それに比べ、試した新しい世代の補聴器は、会話を聞き取るために必要な音量に上げても、紙をめくる音や食器の音といった環境音が前ほど頭に響かず、気にならないといいます。
「補聴器をつけていても、それほど聞こえが変わらないのはダメだと、自分でも常々思っていたのです」とお客さま。あるとき娘さんに「聞こえないことで、周りに迷惑かけているよ」と言われて、ハッとしたそうです。
「今まで、聞こえない自分のことばかり考えていました。夫に対しても、『私は聞こえないんだから、もっと大きな声で言ってよ!』と怒って伝えていました」
たしかに、ずっと大きな声を張り上げて話すことは、経験した方ならお分かりになるかと思いますが、けっこう疲れますよね。それを身近な人に強いてしまっていたことに気付いたというのです。
そうしてもう一度、補聴器をがんばってみようと勇気を出して当店に来られたとのこと。
いまでは新しい補聴器の調整を定期的にしながら、周りの人と普通に楽しくお話できるように。最近やっとおしゃべりできるようになったお孫さんとも、以前は「ごめんね、おばあちゃん聞こえにくいから」とおしゃべりすることを断っていたのが、「もっとたくさん話を聞きたい」「会話をしたい」と、気持ちが変わったそうです。
そんな新しい一歩を踏み出すきっかけに補聴器がなれたことは、うれしい限りです。