【第17回 2021年(令和3年)11月16日(15日発行)】
補聴器の業界団体「日本補聴器工業会」が2018年、補聴器ユーザーと難聴者の大規模調査を行いました。その中にあった質問「より良い聞き取りを最も必要とする場面はどれですか?」に対し過半数の人が挙げたのが「電話での会話」です。
電話の通話における周波数帯域は300~3400ヘルツ。それに対して人間の耳が聞こえる周波数は20~2万ヘルツとされており、電話の音の方が、実際の会話で使われる周波数の幅より狭い。つまり、電話では音質が劣化し、それが聞き取りづらさにつながります。また、電話だと相手の口元や表情、身ぶりなどで情報を補えないため会話を予測することが難しく、電話での会話を苦手とする方が多いのです。
そんな電話での不便を改善するために、近年ではスマホにかかってきた電話の声をスマホから補聴器に直接飛ばす「ダイレクトストリーミング」機能が付いているものや、またその音を両耳で聞くことができる機能を搭載している補聴器などが発売されています。
実は私がいまの補聴器の仕事を一生のものにしたいと思ったきっかけは、学生時代からずっと苦手にしていた電話が、イヤホンをして両耳から声が聞こえるようになると驚くほどスムーズに電話ができるようになった経験からだったんです。
それまでは、電話で会話ができないのは自分の性格が暗いからなのかなとか、社交性がないからではなど、人に言えず悩んでいました。そうではなく、単に聞こえにくかっただけ。聞こえやすくしたら電話の苦手意識が消えました。この体験から、世の中には人知れず聞きづらさを抱え悩んでいる人がいるはずであり、そしてそんな人たちを補聴器がサポートできるのではと思ったのでした。
ツールを使えば、今まで感じていた不便さが驚くほどスムーズになる。そんな思いを伝えたくてこの仕事をしています。