【新聞掲載】補聴器の調整には数値の客観的評価と「専属トレーナー」が必須

2021.10.13

【第13回 2021年(令和3年)10月12日(11日発行)】

 最近はこの連載を読んでくださっている方から私宛てに「補聴器を買ったはいいけどよく聞こえない。どうしていいか分からない」といったお電話をいただくことが増えました。

 その場合にお伝えしていることは、補聴器の調整には2方面のサポートが必要だということです。まず、今の補聴器をつけてどれだけ音が聞こえているかを「数値」で測る。次に、資格者が寄り添う。いわば、専属トレーナー付きのスポーツジムみたいな感じですよ、と。

 専属トレーナー付きジムでは毎日のようにトレーナーと今日食べた食事などの情報をメッセージアプリでやりとりしながら、週2回のジム通いが習慣化していきます。体重や体脂肪率の変化も精密に計測し、どれだけ変わったかを数値で見て実感できるようになる。

 当社でも補聴器をつけ始めたお客さまには同様のことを実施しています。

 かつてこんなお客さまがいました。

 その方はある企業の重役をされている70歳の男性。以前に百貨店で補聴器を購入したもののうまく聞こえず、そのうちに紛失してしまい、2年ぐらいして、やはり仕事で不便を感じ当店に来店されました。

 来店された当初は「補聴器のことはまったく信用していない」「田中さんのところでダメだったらもう補聴器あきらめる」と言われて、重責を感じながら調整をしました。

 それからは補聴器に慣れるまで毎日のようにやりとりをして、週1回の来店時には数値を測定し、「うるさいという感想があるけれども、数値としては上がっているから、もう少しがんばりましょう」というような話をしたり、また理解を深めていただくために補聴器の論文を紹介したりして、出てきた疑問や課題をひとつずつクリアしていきました。

 最終的には、「補聴器はなくてはならないものになった。娘と車でドライブに出掛けたときに今までなら会話ができないとあきらめていたのに、普通に会話ができて驚いた」と、最初の疑心暗鬼な態度とはうって変わって穏やかな笑顔で話していただけるようになりました。

https://hc.nikkan-gendai.com/articles/276821