聴器を使い続けられない4つの理由(4)生活スタイルに合ったタイプの補聴器を選んでいない

2025.07.30

お店に来られるお客さまの中で、実は以前にも 補聴器を購入されたことがあるという方がいらっしゃいます。

 そんな方に比較的に多いのが、販売員にすすめられるまま、安価で、機能的に劣った機器を、その場の判断で購入してしまったというケース。購入後は時間をかけて調整が必要であることを知らないまま、使用するうちに音の大きさや音域などに不便不快を感じるようになり、「補聴器は使えない」となってしまいます。

 一方、補聴器を長く愛用している方の大半は、購入時点で、補聴器を使う場面を具体的にイメージされています。「よく旅行に行くので、旅先でもなるべく言葉の聞き取りが良い補聴器がいい」「テレビの音が聞き取りやすいものがいい」、または「会合が多いのでそこで聞きたい」「音楽も聴きたい」など、補聴器を使う目的や解決したい困りごとがはっきりしています。

 時間をかけて複数の機種を検討し、補聴器選びを負担と思わずむしろ楽しんでいる向きもあると感じられるほど。目標がはっきりしているので、補聴器の調整にも意欲的に取り組み、結果、選んだ後の満足度が高くなるようです。
これは冷蔵庫などの家電を選ぶときと同じです。「1人暮らしで自炊は最小限」や「お取り寄せが好き」など具体的な要望を伝えれば、店員しか知らない情報も含めて、「1人暮らしにコンパクトなサイズでお値段も抑えめ」とか「お取り寄せ食材を保管する冷凍庫の容積が大きくて便利」など最適の冷蔵庫をおすすめしてくれると思います。

 ちなみに「日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会」が、聞こえのセルフチェックをホームページに掲載しています。

 例えば、「初対面の人と会うとき、聞こえなくて困る」「職場の人やお客さんの声が聞こえにくくて困る」「映画館や劇場などで聞き取りづらい」など10項目。改めて問われなければ放置してしまうかもしれない設問が場面ごとに設定されており、ご自身の「聞こえ」の程度が耳鼻咽喉科への受診や 補聴器が必要なレベルかどうかを判断する材料となります。思っている以上に、補聴器が必要なレベルかもしれません。

 主体的に、時間をかけて選んだお気に入りの補聴器なら、毎日身につけられるはず。選ぶ楽しさは補聴器を体の一部のように長く使いこなす第一歩なのです。
=おわり

(2025年7月25日公開 日刊ゲンダイヘルスケア 認定補聴器技能者 田中智子 連載より)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/375270