みなさんのまわりに、以前は 補聴器を使っていたけど、いまはもう使っていないという人はいませんか? また補聴器を親が使っていたけどいつのまにか使わなくなっているという人は?
実はその原因のほとんどは補聴器の音の調整不足が原因なんです。
「目が悪くなったら、眼鏡をかけるのと同じように、耳が遠くなったら補聴器梅沢冨美男をつけることは自然なこと」と以前TVのインタビュー番組で俳優の梅沢冨美男さんもおっしゃっていましたが、補聴器は眼鏡と違って買ってすぐ聞こえるようになるものでなく、調整期間が必要です。
当社に補聴器の相談に来られるお客さまは70~80代の方が主流ですが、加齢性の難聴は30~40代から始まっているといわれています。人によっては30代から難聴がじわじわと進行し、70代で初めて難聴を自覚し補聴器をつけることになるわけです。40年間も聞こえにくい、比較的に音の刺激がない状態だったところに補聴器をつけるのですから、クーラーや空気清浄機、スリッパ、噛むときの音といった生活音をすごくうるさく感じるようになります。よく水洗トイレを流す音は「後ろで滝が流れているのかと思った」などと言われるほど。
このように急に音を入れると脳がびっくりするので、調整が必要不可欠。調整せずに使用すると、音量を抑え気味にする傾向にあり、実際に「 補聴器をつけてよく聞こえない」と言う人の9割が音量不足というデータもあるほどです。
当店では、本来必要とされる音の70%くらいの音量から始め、調整しながら徐々に音量を大きくしていき、2~3カ月後には100%の音量で聞こえが良くなるよう仕上げていきます。
一般的にだいたい4日くらいで慣れてくるという研究データもありますから、「調整後の4日間はうるさい音がしてしんどいかもしれませんが、その間だけは頑張ってください」といつもお伝えしています。それでも人によっては音の慣れ具合が違うもの。補聴器の専門トレーナーともいえる、認定補聴器技能者のいるお店で調整してもらうことをお勧めしています。
調整しない場合や自己流の調整では自分に合った補聴器を手に入れられません。補聴器には買ってから調整期間が必要だということ。補聴器を検討している人はよく覚えておいてください。
=つづく
(2025年7月22日公開 日刊ゲンダイヘルスケア 認定補聴器技能者 田中智子 連載より)