【第79回 2023年(令和5年)3月28日(27日発行)】
これまでほぼ2年にわたり、本連載で補聴器の情報を届けてきました。
連載最後となる今回は、補聴器に関する「覚えておいてほしい3つのこと」を改めてお伝えしたいと思います。
それはまず「難聴は認知症の危険因子」であるということ。
近年の国内外の研究により、難聴で言葉の情報量が少なくなるだけでなく、音の刺激自体が脳に伝わらなくなることで脳の萎縮が進んだり神経細胞の活動が弱まり、認知症の発症に大きく影響することが明らかになってきました。難聴を決して侮らないでほしいのです。
次に「『音が聞こえる』と『言葉が聞き取れる』は違う能力である」ということ。
言葉を聞き取る力である語音明瞭度は、耳から入る音を言葉に変換する力が弱くなると低下します。残念ながら語音明瞭度が下がると、補聴器をいくら調整しても聴力に問題がない人と同じように言葉を聞き取ることができません。
この辺の説明が十分にないままに補聴器を購入すると「期待したほど聞こえない」となります。だからこそ早めに補聴器で脳に音の刺激を入れてあげることが必要になるのです。
そして最後は「補聴器は調整とトレーニングが必要である」ということです。
補聴器はつけてすぐ聞こえるようになるものではありません。調整しながら慣らしていくことで、雑音への意識が減り、聞きたい音(会話)に集中できるようになります。この慣れる調整期間として、だいたい3カ月は必要なのです。
以上の3つは、これから補聴器をつけようと考えている方にとってぜひとも押さえていただきたいポイント。これからもみなさんが求める、補聴器の情報をさまざまな形で発信し続けていきたいと思います。(おわり)