【第78回 2023年(令和5年)3月21日(20日発行)】
本連載を読んだというお客さまから「認知症は補聴器で予防できるの?」という疑問をいただくことがあります。
補聴器は医療機器です。医療機器には、効能効果が厳密に定められており、現時点で補聴器に定められている効能効果は「難聴者の聴力を補う」です。この効能効果以外のことを表現することはできません。
一方、2016年の世界保健機関(WHO)の執行理事会では、認知症が単独の議題として初めて取り上げられました。その後、難聴が認知症のリスクのひとつとして認識されるようになり、補聴器の認知症予防効果についての注目は年々高まっています。欧米やわが国でさまざまな研究が進み「補聴器を使用する人は補聴器を使用していなかった人に比べ認知機能の低下が抑えられる」という結果が複数発表されているのも事実です。
認知症の大半を占めるアルツハイマー型認知症は、今のところ根本治療は確立されていません。そのため、発症を遅らせたり進行を緩やかにする手段があるならば、それを実践するのは良いことだと思います。
認知機能低下の予防につながる可能性が高いとされているのは、運動、栄養改善などに加え、社会交流、趣味活動など日常生活における取り組みだといわれています。
補聴器の装用によって今より聞こえるようになることで、コミュニケーションがスムーズになり、人と話す機会が増え、社会交流・趣味活動などが活発になりうるでしょう。もし聞こえが悪い方が周りにおられたら、そのままにせず、補聴器を早めにつけることをおすすめします。