【第32回 2022年(令和4年)3月15日(14日発行)】
3月に入り春めいてきましたが、この季節は春らしい暖かい気候が続いたと思えば、急に気温が下がったりと、不安定な気候が続きます。そんな天気の影響を受けて、体調を崩される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな天気の変化が原因で起こる体調不良のことを最近「気象病」や「天気痛」と呼ぶようです。
このような天気の変化による体の不調に対し日本で初めて「天気痛」と名付け、専門外来を立ち上げた愛知医科大の佐藤純医師によると、耳の中の器官「内耳」が天気痛の発生に大きく関係しているとのこと。
天気痛の特徴のひとつが、症状が多岐にわたっている点です。頭痛、めまい、耳鳴り、倦怠感、うつなど人によってさまざまで、その重さも個々それぞれ。いずれにしても内耳が気圧の急激な低下や上昇を感じ、自律神経のバランスを崩すことが原因のようです。
このコラムでも以前、耳鳴りの新しい治療法として補聴器を利用した音響療法が最近注目されているとお伝えしました。耳鳴りは気象病・天気痛の症状にもみられるものです。
実は古くから、気候の変化と体調が関係があると訴える患者さんは多かったのですが、つい最近までそのメカニズムははっきりと分かってはいませんでした。それを佐藤医師が2019年、マウスを使った実験で実証。内耳の器官が影響しているというメカニズムを突き止めたわけです。
耳は、音を聞くだけの器官でなく、気圧の変化や平衡感覚などもつかさどる、大事でデリケートな器官だというわけなんです。
原因不明の体調不良はつらいもの。でも原因が分かると安心したり、備えることができたりします。「今日は気圧の変化が激しいから仕方ない。ゆっくり休もう」と自分で自分の体調をコントロールしたり、適切に対処することができるといいですね。